本コラムは、中小企業の情報システム担当者向けに、日々発生するITトラブルや障害に対して「まず何を確認すべきか」「どこまで切り分ければよいのか」を体系的に解説する『中小企業のためのIT障害対応 実践シリーズ』の第8回です。
サーバー容量の逼迫は、Webサイトやシステムの安定稼働を脅かす深刻な問題です。ログ、バックアップ、一時ファイルの肥大化はよくある原因ですが、適切な整理と再発防止策を講じることで、パフォーマンス低下やダウンタイムのリスクを軽減できます。
目次
サーバー容量逼迫の現状把握と影響
サーバー容量逼迫の兆候と確認方法
サーバー容量の逼迫は、Webサイトやアプリケーションのパフォーマンスに深刻な影響を与える可能性があります。兆候としては、Webサイトの応答速度の低下、エラーメッセージの頻発、 データベースのクエリ実行時間の増加などが挙げられます。これらの兆候が見られた場合は、迅速にサーバーのディスク使用量を確認することが重要です。確認方法としては、サーバー管理画面(例:Xserverのコントロールパネル)にログインし、 ディスク使用量を確認するのが一般的です。また、SSHでサーバーにログインし、df -hコマンドを実行することでも、 ディスク使用量を確認できます。さらに、MuninやZabbixなどの監視ツールを導入することで、 ディスク使用量をリアルタイムで監視し、閾値を超えた場合にアラートを通知するように設定することも可能です。
逼迫によるWebサイトへの影響
サーバー容量が逼迫すると、Webサイトの表示速度が著しく低下し、 ユーザーエクスペリエンスが損なわれます。画像や動画などのコンテンツの読み込みに時間がかかったり、 Webページの応答が遅延したりすることで、ユーザーの離脱率が高まる可能性があります。また、データベースへの書き込み処理が正常に完了しなくなることで、 Webサイトの機能が一部制限されたり、最悪の場合、Webサイト全体がダウンしてしまうことも考えられます。 ECサイトであれば、商品の購入手続きが正常に行えなくなるなど、売上に直接的な影響が出ることもあります。 さらに、Webサイトの更新作業やコンテンツのアップロードも困難になり、Webサイトの運営自体が滞ってしまう可能性があります。
ログファイルの整理と効率的な管理
不要なログファイルの特定と削除
Webサーバー(Apache,Nginxなど)やアプリケーションは、 動作状況やエラー情報などを記録するために、 ログファイルを生成します。これらのログファイルは、時間の経過とともに肥大化し、 ディスク容量を圧迫する原因となります。 不要なログファイルを特定し、削除することで、ディスク容量を節約できます。 不要なログファイルの特定方法としては、 まず、ログファイルの保存期間を確認し、一定期間以上経過したログファイルを削除することが考えられます。 アクセスログやエラーログなど、 ログの種類に応じて適切な保存期間を設定することが重要です。また、ログファイルの内容を分析し、 不要な情報や重複した情報を削除することも有効です。 例えば、デバッグ用のログや、特定のIPアドレスからのアクセスログなどは、 削除しても問題ない場合があります。
ログローテーション設定の最適化
ログローテーションとは、ログファイルを一定のサイズや期間ごとに、 自動的に分割したり、圧縮したり、削除したりする仕組みのことです。ログローテーションを設定することで、 ログファイルが肥大化するのを防ぎ、 ディスク容量を効率的に管理できます。 ログローテーションの設定は、Webサーバーやアプリケーションの設定ファイルで行います。 例えば、Apacheの場合は、rotatelogsコマンドを使用したり、logrotateユーティリティを利用したりすることで、 ログローテーションを設定できます。 ログローテーションの設定項目としては、 ローテーションを行う頻度、ログファイルの最大サイズ、 保存するログファイルの世代数などがあります。 これらの設定項目を適切に設定することで、 ログファイルの肥大化を防ぎつつ、必要なログ情報を保持することができます。
ログ収集・分析基盤の導入検討
ログ収集・分析基盤とは、 複数のサーバーやアプリケーションからログデータを一元的に収集し、分析するためのシステムのことです。 ログ収集・分析基盤を導入することで、 問題発生時の原因特定を迅速化できるだけでなく、ログデータを活用して、Webサイトの改善やセキュリティ対策に役立てることができます。 ログ収集・分析基盤としては、 Elasticsearch,Logstash, Kibana (通称:ELKスタック) や、 Splunk, Datadogなどが挙げられます。 これらのツールを導入することで、ログデータの可視化や分析、 異常検知などを容易に行うことができます。 また、ログデータを長期的に保存し、 過去のデータと比較することで、傾向分析や将来予測などにも活用できます。
バックアップデータの最適化と世代管理
バックアップ対象データの見直し
バックアップは、Webサイトやアプリケーションのデータを保護するために不可欠ですが、 バックアップデータはディスク容量を大きく消費します。バックアップ対象データを見直すことで、 バックアップに必要なディスク容量を削減できます。 バックアップ対象データを見直す際には、まず、不要なファイルやディレクトリを特定し、 バックアップ対象から除外することを検討しましょう。 例えば、キャッシュファイルや一時ファイル、古いログファイルなどは、 バックアップする必要がない場合があります。 また、データベースのバックアップにおいては、不要なテーブルやインデックスをバックアップ対象から除外することも有効です。 さらに、メディアファイル(画像や動画など)は、 容量が大きいため、バックアップ頻度を下げるか、 別のストレージに保存することを検討しましょう。
差分バックアップ/増分バックアップの活用
フルバックアップは、すべてのデータをバックアップするため、 時間とディスク容量を多く必要とします。 差分バックアップや増分バックアップを活用することで、バックアップ時間とディスク容量を大幅に削減できます。 差分バックアップは、前回のフルバックアップからの変更点のみをバックアップします。増分バックアップは、前回のバックアップ(フル、差分、増分)からの変更点のみをバックアップします。差分バックアップは、復元時にフルバックアップと最新の差分バックアップが必要になります。増分バックアップは、復元時にフルバックアップとすべての増分バックアップが必要になります。そのため、増分バックアップは、差分バックアップよりも復元に時間がかかる場合があります。WordPressの場合、BackWPupなどのプラグインを利用することで、 差分バックアップや増分バックアップを容易に設定できます。
バックアップデータの世代管理と自動削除
バックアップデータを世代管理し、 古いバックアップデータを自動的に削除することで、 ディスク容量を節約できます。世代管理とは、バックアップデータを一定期間ごとに保存し、 古いデータから順に削除していく仕組みのことです。 世代管理のルールを明確化し、定期的に見直すことが重要です。 例えば、「毎日のフルバックアップを1週間分、 毎週のフルバックアップを1ヶ月分、 毎月のフルバックアップを1年間分保存する」といったルールを設定することができます。 また、バックアップデータの自動削除を設定することで、 手動で削除する手間を省き、 削除忘れを防ぐことができます。ただし、誤って必要なバックアップデータを削除してしまわないように、 削除設定は慎重に行う必要があります。
一時ファイルの適切な管理と自動削除
一時ファイルの生成場所と種類
WebアプリケーションやOSは、処理の過程で一時ファイルを作成します。 一時ファイルは、キャッシュデータやセッション情報、 アップロードされたファイルの一時保存場所など、様々な種類があります。 一時ファイルの生成場所と種類を把握することで、 適切な管理方法を選択できます。 一時ファイルの生成場所としては、/tmpディレクトリや、アプリケーション固有の一時ディレクトリなどが挙げられます。 一時ファイルの種類としては、 セッションファイル、キャッシュファイル、ログファイル、アップロードファイルなどがあります。 これらのファイルを適切に管理し、 不要になった時点で削除することが重要です。
定期的な一時ファイル削除スクリプトの実行
一時ファイルを定期的に削除するスクリプトを作成し、 cronなどで自動実行することで、 ディスク容量を節約できます。削除スクリプトは、一時ファイルの保存期間や種類に応じて、 適切に設定する必要があります。 例えば、セッションファイルは、セッションの有効期限が切れた時点で削除する必要があります。 キャッシュファイルは、 一定期間経過後に削除するか、キャッシュの最大サイズを超えた場合に削除する必要があります。 削除スクリプトは、 findコマンドやrmコマンドなどを組み合わせて作成することができます。ただし、誤って必要なファイルを削除してしまわないように、 削除スクリプトは慎重に作成し、 テスト環境で十分に検証してから、本番環境で実行するようにしましょう。
/tmpディレクトリの適切な管理
/tmpディレクトリは、 一時ファイルの保存場所としてよく利用されます。/tmpディレクトリの容量を監視し、 不要なファイルが溜まっていないか定期的に確認しましょう。 /tmpディレクトリに保存されたファイルは、OSの再起動時に削除されることが一般的ですが、 必ずしもすべてのファイルが削除されるとは限りません。そのため、定期的に/tmpディレクトリをクリーンアップする必要があります。 /tmpディレクトリのクリーンアップは、 cronなどで自動化することができます。ただし、/tmpディレクトリには、 他のアプリケーションが使用しているファイルも保存されている可能性があるため、 削除する際には注意が必要です。削除するファイルの条件を慎重に検討し、 必要なファイルを誤って削除してしまわないように注意しましょう。
再発防止のための運用体制と監視
ディスク容量監視の自動化
ディスク容量の使用状況を定期的に監視し、閾値を超えた場合にアラートを通知するように設定することで、 容量逼迫を未然に防ぐことができます。 ディスク容量監視は、MuninやZabbixなどの監視ツールを導入することで、 自動化することができます。 これらのツールは、ディスク容量だけでなく、CPU使用率やメモリ使用量なども監視することができます。 また、CloudWatch (AWS) や Google CloudMonitoring など、 クラウドプロバイダーが提供する監視サービスを利用することもできます。 アラートの通知先は、 メールやチャットツールなどが一般的です。アラートを受け取ったら、 迅速に状況を確認し、 適切な対応を行う必要があります。
運用ルールの策定と定期的な見直し
ログファイルの保存期間、バックアップデータの世代管理、 一時ファイルの削除ルールなど、 運用ルールを明確化し、定期的に見直すことで、 容量逼迫のリスクを低減できます。 運用ルールは、ドキュメントにまとめ、 関係者全員がアクセスできるようにする必要があります。 また、運用ルールは、 定期的に見直し、 必要に応じて修正する必要があります。運用ルールの見直しは、 少なくとも年に1回は行うようにしましょう。 運用ルールの見直しを行う際には、 過去の容量逼迫の事例や、システムの変更などを考慮する必要があります。 運用ルールは、 現実的で実行可能なものでなければなりません。 無理なルールを設定すると、運用が滞り、かえってリスクを高めてしまう可能性があります。
サーバーリソース増強の検討
ディスク容量の逼迫が頻繁に発生する場合は、サーバーのリソース増強を検討しましょう。 クラウドサーバーであれば、 必要に応じて柔軟にリソースを拡張できます。 サーバーのリソース増強は、ディスク容量だけでなく、 CPUやメモリの増強も検討する必要があります。 CPUやメモリの増強は、Webサイトやアプリケーションのパフォーマンス向上にもつながります。 サーバーのリソース増強を行う際には、 まず、現状のサーバーリソースの使用状況を分析し、ボトルネックとなっている箇所を特定する必要があります。 ボトルネックがディスク容量である場合は、 ディスク容量を増強するだけで問題ありません。しかし、CPUやメモリがボトルネックとなっている場合は、 CPUやメモリも増強する必要があります。 サーバーのリソース増強は、 コストがかかるため、慎重に検討する必要があります。
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