本コラムは『サプライチェーンセキュリティ対策評価制度 完全対応ガイドシリーズ』の第7回です。
実務担当者が制度対応をスムーズに進めるためのロードマップを解説します。制度の概要から具体的な準備、運用まで、段階的なステップで解説し、企業がセキュリティレベルを向上させ、取引先からの信頼を得るための情報を提供します。
目次
- サプライチェーンセキュリティ対策評価制度とは
- 実務担当者が取り組むべき準備ステップ
- 対策実施における注意点とよくある誤解
- SCS評価制度対応を成功させるためのポイント
- まとめ:サプライチェーン全体のセキュリティレベル向上に向けて
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サプライチェーンセキュリティ対策評価制度とは
評価制度の概要と目的
サプライチェーンセキュリティ対策評価制度(SCS評価制度)は、サプライチェーン全体のセキュリティレベル向上を目的としています。具体的には、情報セキュリティに関するリスクを低減し、事業継続性を確保することを目標としています。この制度は、経済産業省が中心となって推進しており、中小企業から大企業まで、サプライチェーンに関わる全ての企業が対象となります。企業規模や業種にかかわらず、サプライチェーン全体でのセキュリティ対策の重要性が高まっている背景から、この制度が設けられました。
SCS評価制度の主な目的は、サプライチェーンにおけるセキュリティリスクの可視化と対策の促進です。企業は、自社のサプライチェーンにおけるリスクを評価し、適切な対策を講じることで、サプライチェーン全体のセキュリティレベルを向上させることができます。また、この制度は、企業が取引先との連携を強化し、相互にセキュリティ対策を改善していくことを奨励しています。サプライチェーン全体でのセキュリティ意識の向上と対策の実施を促し、日本経済全体の安全性を高めることを目指しています。
対象となる企業と範囲
サプライチェーンセキュリティ対策評価制度(SCS評価制度)は、発注側企業だけでなく、受注側企業も対象となります。これは、サプライチェーン全体でのセキュリティ対策が不可欠であるという考えに基づいています。発注側企業は、自社のセキュリティ対策だけでなく、取引先のセキュリティ対策状況も把握し、必要に応じて指導や支援を行うことが求められます。一方、受注側企業は、発注側企業の要求に応えるだけでなく、自社のセキュリティ対策を強化し、情報漏洩やサイバー攻撃のリスクを低減する責任があります。
この制度の対象範囲は、企業の規模や業種によって異なります。中小企業の場合は、比較的簡易な対策から始めることができますが、大企業の場合は、より高度なセキュリティ対策が求められることがあります。また、特定の業種(例えば、金融機関や医療機関など)の場合は、より厳格なセキュリティ基準が適用されることがあります。企業は、自社の規模や業種、取引先の要求に応じて、適切なセキュリティ対策を講じる必要があります。重要なことは、サプライチェーン全体でセキュリティ対策を強化し、情報漏洩やサイバー攻撃のリスクを最小限に抑えることです。
評価レベルと目標設定
SCS評価制度では、企業のセキュリティ対策レベルを★1から★5までの5段階で評価します。この評価は、企業のセキュリティ対策の成熟度を示すものであり、★5が最も高いレベルとなります。企業は、自社の現状を把握し、目標とするレベルを設定する必要があります。
目標レベルの設定は、企業の規模や業種、取引先の要求などを考慮して行う必要があります。例えば、中小企業の場合は、まずは★1や★2を目標とし、段階的にレベルアップを目指すことができます。一方、大企業の場合は、★3以上を目標とすることが一般的です。また、特定の業種(例えば、金融機関や医療機関など)の場合は、より高いレベルが要求されることがあります。目標レベルを設定する際には、自社の現状のセキュリティ対策レベルを正確に把握し、目標レベルとのギャップを分析することが重要です。ギャップを埋めるための具体的な対策計画を策定し、計画的に対策を実施していくことが、目標達成への鍵となります。
実務担当者が取り組むべき準備ステップ
現状把握とリスクアセスメント
SCS評価制度への対応の第一歩は、自社のサプライチェーンにおけるセキュリティリスクの現状を把握することです。そのためには、まず、サプライチェーン全体の構造を把握し、どの企業や部門がどのような情報を取り扱っているかを明確にする必要があります。次に、各企業や部門におけるセキュリティ対策の実施状況を調査し、脆弱性やリスクを洗い出します。この際、NISTCSF(サイバーセキュリティフレームワーク)などのフレームワークを活用することで、網羅的なリスクアセスメントを実施することができます。
リスクアセスメントでは、情報資産の重要度、脅威の深刻度、脆弱性の度合いなどを評価し、リスクの大きさを定量的に評価します。評価結果に基づき、優先的に対策を実施すべきリスクを特定し、具体的な対策計画を策定します。リスクアセスメントは、一度実施すれば終わりではありません。定期的に見直し、変化する脅威や脆弱性に対応していくことが重要です。
対策計画の策定
リスクアセスメントの結果に基づき、具体的な対策計画を策定します。対策計画では、優先順位をつけ、段階的に対策を実施していくことが重要です。計画には、具体的な対策内容、実施責任者、実施期限、必要な予算などを明記します。SECURITYACTIONなどの取り組みも参考に、実現可能な計画を立てましょう。
対策計画の策定にあたっては、技術的な対策だけでなく、組織的な対策も考慮する必要があります。例えば、従業員に対するセキュリティ教育や訓練の実施、セキュリティポリシーの策定、インシデント発生時の対応手順の整備なども重要な対策となります。また、サプライチェーン全体での情報共有体制を構築し、連携を強化することも重要です。対策計画は、定期的に見直し、改善を繰り返すことで、より効果的なセキュリティ対策を実現することができます。
文書化と証跡の管理
実施した対策は、文書化し、証跡を管理することが重要です。セキュリティポリシー、手順書、教育資料、リスクアセスメントの結果、対策計画、実施記録など、セキュリティに関する全ての文書を体系的に管理します。これらの文書は、評価を受ける際に重要な資料となります。また、文書化された情報は、従業員への教育や訓練、セキュリティ対策の見直しなどにも活用することができます。
証跡の管理では、ログの取得と分析、アクセス制御の記録、インシデント発生時の対応記録などを適切に管理します。これらの証跡は、インシデント発生時の原因究明や再発防止策の検討に役立ちます。文書化と証跡の管理は、継続的に行うことが重要です。定期的に文書を見直し、最新の情報に更新するとともに、証跡を分析し、セキュリティ対策の改善に役立てていきましょう。
対策実施における注意点とよくある誤解
担当者依存からの脱却
セキュリティ対策の実施において、担当者依存の状態は非常に危険です。特定の担当者しか対応できない場合、その担当者が不在の場合や退職した場合に、セキュリティ対策が滞ってしまう可能性があります。そのため、インシデント対応が担当者依存にならないように、手順化と連絡ルートを明確にしておく必要があります。手順書を作成し、複数の担当者が対応できるように訓練を実施することが重要です。
また、ログを取得するだけでなく、監視・確認(レビュー)の定義も重要です。ログを定期的に確認し、異常なアクセスや不審な挙動を検知することで、インシデントの早期発見につながります。監視・確認の手順も文書化し、複数の担当者が実施できるようにしておくことが望ましいです。担当者依存からの脱却は、組織全体のセキュリティレベル向上に不可欠な要素です。
情報共有とコミュニケーション
サプライチェーン全体での情報共有とコミュニケーションを円滑に行うことが、セキュリティ対策の成功には不可欠です。取引先との連携を強化し、セキュリティ対策に関する意識を共有しましょう。例えば、定期的な会議や研修会を開催し、セキュリティに関する最新情報や脅威動向を共有することが有効です。また、インシデントが発生した場合の連絡体制を整備し、迅速な情報共有を可能にすることも重要です。
情報共有とコミュニケーションは、単なる情報伝達だけでなく、相互理解を深めるためのものでもあります。取引先のセキュリティ対策状況を把握し、必要に応じて支援や助言を行うことで、サプライチェーン全体のセキュリティレベル向上に貢献することができます。また、自社のセキュリティ対策状況を積極的に開示することで、取引先からの信頼を得ることができます。情報共有とコミュニケーションは、サプライチェーン全体のセキュリティ文化を醸成し、強固な連携体制を構築するための重要な要素です。
格付け制度との違い
SCS評価制度は、企業同士を競わせる格付け制度ではありません。企業のセキュリティ対策レベルを評価し、改善を促すことを目的としています。★の数は、あくまで自社のセキュリティ対策の成熟度を示すものであり、他社との比較や優劣を示すものではありません。また、★を取得すれば安全が保証されるわけでもありません。セキュリティ対策は継続的に見直し、改善していく必要があります。
SCS評価制度は、受注側だけでなく、発注側も協力して取り組む必要があります。発注側企業は、取引先のセキュリティ対策状況を把握し、必要に応じて指導や支援を行う責任があります。受注側企業は、発注側企業の要求に応えるだけでなく、自社のセキュリティ対策を強化し、情報漏洩やサイバー攻撃のリスクを低減する責任があります。サプライチェーン全体での協力体制を構築し、セキュリティレベル向上を目指していくことが重要です。
SCS評価制度対応を成功させるためのポイント
外部リソースの活用
自社内に専門知識を持つ人材がいない場合は、「サイバーセキュリティお助け隊サービス」や診断・コンサルティングサービスなど、外部リソースの活用を検討しましょう。これらのサービスを利用することで、専門的な知識や技術を活用し、効率的にセキュリティ対策を進めることができます。外部リソースを活用する際には、自社のニーズに合ったサービスを選択することが重要です。また、外部リソースに丸投げするのではなく、自社の担当者も積極的に関与し、知識やノウハウを蓄積していくことが望ましいです。
サイバーセキュリティお助け隊サービスは、中小企業向けのセキュリティ対策支援サービスであり、セキュリティ対策の相談やアドバイス、セキュリティ対策ツールの導入支援などを受けることができます。診断・コンサルティングサービスは、企業のセキュリティ対策状況を評価し、改善策を提案するサービスであり、より高度なセキュリティ対策を検討している企業に適しています。外部リソースの活用は、SCS評価制度対応を成功させるための有効な手段の一つです。
最新情報の収集
SCS評価制度の内容は、変更される可能性があります。経済産業省やIPA(情報処理推進機構)などの公式サイトで最新情報を収集し、常にアップデートするように心がけましょう。制度の変更点や新たな脅威動向に対応するためには、常に最新の情報を把握しておくことが重要です。また、セキュリティに関するセミナーやイベントに参加することで、最新の情報を収集することができます。
経済産業省の公式サイトでは、SCS評価制度に関する最新情報や関連資料が公開されています。IPAの公式サイトでは、サイバーセキュリティに関する最新情報や注意喚起、セキュリティ対策に関する情報などが公開されています。これらの公式サイトを定期的にチェックし、最新情報を収集するように心がけましょう。また、セキュリティに関するニュースやブログなども参考に、最新の脅威動向やセキュリティ対策に関する知識を深めていきましょう。
継続的な改善
セキュリティ対策は一度実施すれば終わりではありません。定期的に見直し、改善を繰り返すことで、より強固なセキュリティ体制を構築することができます。定期的な見直しでは、リスクアセスメントの結果やインシデント発生状況などを分析し、セキュリティ対策の有効性を評価します。評価結果に基づき、対策の改善や新たな対策の導入を検討します。
また、従業員に対するセキュリティ教育や訓練も継続的に実施することが重要です。従業員のセキュリティ意識を高め、正しい行動を促すことで、人的なミスによる情報漏洩やサイバー攻撃のリスクを低減することができます。セキュリティ対策は、技術的な対策だけでなく、組織的な対策や人的な対策も組み合わせることで、より効果的なものとなります。継続的な改善を通じて、セキュリティ体制を強化し、企業全体の安全性を高めていきましょう。
まとめ:サプライチェーン全体のセキュリティレベル向上に向けて
本記事では、サプライチェーンセキュリティ対策評価制度(SCS評価制度)について、その概要から実務担当者が取り組むべき準備ステップ、対策実施における注意点、そして対応を成功させるためのポイントまでを解説しました。実務担当者は、本記事で解説したロードマップを参考に、着実に準備を進めていきましょう。サプライチェーン全体のセキュリティレベル向上に貢献し、取引先からの信頼を獲得することで、ビジネスの成長につなげることができます。
SCS評価制度への対応は、単なる義務ではなく、企業価値を高めるための投資であると捉えることが重要です。セキュリティ対策を強化することで、情報漏洩やサイバー攻撃のリスクを低減し、事業継続性を確保することができます。また、取引先からの信頼を得ることで、新たなビジネスチャンスを創出することができます。サプライチェーン全体のセキュリティレベル向上に向けて、積極的に取り組んでいきましょう。
※本制度は現在構築中(2026年度運用開始予定)のものです。最新の情報は経済産業省の公式サイト等で随時ご確認ください。本格始動に備え、現段階から自社のセキュリティポリシーの見直しや、サプライヤーとのコミュニケーションラインの再確認を進めておくことが推奨されます。
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