本コラムは、中小企業の情報システム担当者向けに、日々発生するITトラブルや障害に対して「まず何を確認すべきか」「どこまで切り分ければよいのか」を体系的に解説する『中小企業のためのIT障害対応 実践シリーズ』の第3回です。
DNSサーバーとの接続で発生するトラブルは、Webサイトの表示遅延や接続不可など、業務に大きな影響を与えます。本記事では、DNS名前解決が遅い・できない時にありがちなケースと、その原因、具体的な確認ポイントと解決策を解説します。
目次
DNS名前解決とは?仕組みを理解する
DNS名前解決の基本
DNS(Domain Name System)は、インターネットを使う上で 不可欠なシステムであり、ドメイン名とIPアドレスを結びつける重要な役割を担っています。人が理解しやすいドメイン名(例えば、example.com)を、コンピュータが実際に通信を行う際に必要となるIPアドレス(例:192.0.2.1)へと変換する仕組みです。この変換処理を「名前解決」と呼び、DNSはこの名前解決を行うためのシステムなのです。DNSがなければ、WebサイトにアクセスするたびにIPアドレスを直接入力する必要があり、インターネットの利用は非常に不便になります。DNSのおかげで、私たちは覚えやすいドメイン名を使って快適にインターネットを利用できているのです。DNSサーバーは世界中に分散して配置されており、効率的な名前解決を実現するために連携して動作しています。これらのサーバーが情報を共有し、迅速かつ正確にIPアドレスを提供することで、インターネットの安定的な運用を支えているのです。
名前解決の流れ
名前解決は、ブラウザにURLを入力した瞬間から始まります。 まず、ローカルのDNSキャッシュが確認され、過去にアクセスしたWebサイトの情報が保存されていないかがチェックされます。もしキャッシュに該当する情報があれば、そのIPアドレスがすぐに利用され、Webサイトへのアクセスが高速化されます。しかし、キャッシュに情報がない場合は、DNSサーバーへの問い合わせが行われます。この問い合わせは、通常、ISP(インターネットサービスプロバイダー)が提供するDNSサーバーに対して行われます。DNSサーバーは、ドメイン名に対応するIPアドレスを検索し、その結果をクライアントに返します。クライアントは、取得したIPアドレスを使ってWebサーバーにアクセスし、Webページのコンテンツをダウンロードして表示します。この一連の流れが、名前解決の基本的なプロセスです。DNSキャッシュとDNSサーバーの連携によって、効率的かつ迅速なWebサイトへのアクセスが実現されています。
DNSレコードの種類
DNSレコードは、ドメイン名に関する様々な情報をDNSサーバーに登録するために使用されます。 最も基本的なレコードタイプの一つがAレコードで、ドメイン名をIPv4アドレスに対応付けます。CNAMEレコードは、あるドメイン名を別のドメイン名(正規名)の別名として定義するために使用されます。MXレコードは、ドメイン宛のメールを処理するメールサーバーを指定するために使用されます。その他にも、TXTレコード(任意のテキスト情報)、NSレコード(ネームサーバー)、AAAAレコード(IPv6アドレス)など、様々な種類のレコードが存在します。これらのレコードが正しく設定されていることが、Webサイトへのアクセスやメールの送受信など、インターネット上の様々なサービスが正常に機能するために不可欠です。DNSレコードの設定ミスは、Webサイトが表示されない、メールが届かないなどの問題を引き起こす可能性があります。したがって、DNSレコードの設定は慎重に行う必要があります。
名前解決が遅い・できない原因と確認ポイント
DNSサーバーへの接続問題
DNSサーバーに接続できない場合、名前解決は根本的に不可能になります。 この問題は、ルーターやファイアウォールの設定、DNSサーバー自体のトラブルなど、様々な原因によって引き起こされる可能性があります。まず、pingコマンドを使ってDNSサーバーへの疎通確認を行い、ネットワーク接続が正常かどうかを確認することが重要です。pingコマンドは、指定したホストに対してパケットを送信し、応答があるかどうかを調べることで、ネットワークの接続状況を確認するツールです。もしpingがタイムアウトする場合は、ネットワーク経路に問題があるか、DNSサーバーがダウンしている可能性があります。ルーターやファイアウォールの設定を確認し、DNSサーバーへの通信が許可されていることを確認してください。また、ISPが提供するDNSサーバーに問題が発生している可能性も考慮し、別のDNSサーバー(例:Google Public DNSやCloudflareDNS)を試してみることも有効な解決策です。これらのDNSサーバーは、高い信頼性と高速な応答速度を提供しており、多くのユーザーに利用されています。
DNSサーバーの応答遅延
DNSサーバーの応答が遅延すると、Webサイトの表示に時間がかかったり、アプリケーションの動作が遅くなるなどの問題が発生します。 この遅延は、DNSサーバー自体の負荷が高い場合や、地理的に遠いDNSサーバーを利用している場合に顕著になります。DNSサーバーの負荷が高い場合は、サーバーのリソースが不足しているか、大量のDNSクエリが処理されている可能性があります。地理的に遠いDNSサーバーを利用している場合は、ネットワークの遅延が大きくなり、応答時間が長くなる傾向があります。このような場合は、より近い場所にあるDNSサーバーや、応答速度が速いパブリックDNSサーバー(例:Google Public DNS、CloudflareDNS)への変更を検討することが有効です。これらのパブリックDNSサーバーは、世界中に分散したサーバーネットワークを持っており、高速かつ信頼性の高いDNSサービスを提供しています。DNSサーバーを変更することで、名前解決の速度が向上し、Webサイトの表示速度やアプリケーションのパフォーマンスが改善されることが期待できます。
DNSキャッシュの問題
DNSキャッシュは、過去に名前解決した情報を一時的に保存する仕組みで、名前解決の高速化に貢献しています。 しかし、誤った情報がDNSキャッシュに保存されていると、名前解決が失敗したり、古い情報が表示されたりするなどの問題が発生することがあります。例えば、WebサイトのIPアドレスが変更された場合、DNSキャッシュに古いIPアドレスが残っていると、新しいWebサイトにアクセスできなくなる可能性があります。このような問題を解決するためには、DNSキャッシュをクリアする必要があります。Windowsではipconfig/flushdnsコマンド、macOSではdscacheutil-flushcacheコマンドを使用することで、DNSキャッシュをクリアすることができます。DNSキャッシュをクリアすることで、最新のDNS情報を取得し、名前解決の問題を解消することができます。また、ブラウザにもDNSキャッシュが保存されている場合があるため、ブラウザのキャッシュもクリアすることを推奨します。
クライアント環境の設定ミス
IPアドレスとDNSサーバー設定の確認
クライアントPCのIPアドレス設定やDNSサーバーのアドレスが誤っていると、名前解決が正常に行われません。 IPアドレスが正しく設定されていない場合、ネットワークに接続できず、DNSサーバーにアクセスできません。DNSサーバーのアドレスが誤っている場合は、正しいIPアドレスを取得できず、Webサイトにアクセスできません。通常、IPアドレスやDNSサーバーのアドレスは、DHCPサーバーから自動的に割り当てられます。DHCPサーバーからIPアドレスを自動取得している場合は、DHCPサーバーの設定が正しいかを確認してください。手動でIPアドレスやDNSサーバーのアドレスを設定している場合は、設定値が正しいかを確認してください。DNSサーバーのアドレスには、ISPが提供するDNSサーバーのアドレスや、Google PublicDNS(8.8.8.8、8.8.4.4)、CloudflareDNS(1.1.1.1、1.0.0.1)などのパブリックDNSサーバーのアドレスを指定することができます。これらのパブリックDNSサーバーは、高速かつ信頼性の高いDNSサービスを提供しており、多くのユーザーに利用されています。
ネットワークアダプターのトラブル
ネットワークアダプターのドライバーが古い、または破損している場合、ネットワーク接続が不安定になり、名前解決に影響を与えることがあります。 ドライバーが古い場合は、最新版に更新することで問題が解決することがあります。ドライバーが破損している場合は、一度アンインストールしてから再インストールすることで問題が解決することがあります。ネットワークアダプターのドライバーは、デバイスマネージャーから更新または再インストールすることができます。デバイスマネージャーを開き、ネットワークアダプターを選択し、右クリックして「ドライバーの更新」または「デバイスのアンインストール」を選択します。ドライバーの更新では、Windowsが自動的に最新のドライバーを検索してインストールします。デバイスのアンインストールでは、ネットワークアダプターのドライバーが削除されます。アンインストール後、PCを再起動すると、Windowsが自動的にドライバーを再インストールします。また、ネットワークアダプター自体に問題がある可能性も考慮し、別のネットワークアダプターを試してみることも有効な解決策です。
VPN接続の影響
VPN(VirtualPrivate Network)接続時にDNS設定が変更され、名前解決に影響を与えることがあります。 VPN接続を使用すると、DNSサーバーのアドレスがVPNプロバイダーが提供するDNSサーバーに自動的に変更されることがあります。このDNSサーバーが応答しない場合や、遅延が大きい場合は、名前解決に問題が発生します。VPN接続を切断した状態で問題が解消される場合、VPN設定の見直しや、VPNプロバイダーへの問い合わせが必要です。VPN設定の見直しでは、VPN接続時に使用するDNSサーバーのアドレスを手動で設定することができます。VPNプロバイダーへの問い合わせでは、VPNプロバイダーが提供するDNSサーバーの状態や設定について確認することができます。また、VPN接続を使用せずに、直接インターネットに接続した場合に問題が解消されるかどうかを確認することも重要です。もし、VPN接続を使用しなくても問題が発生する場合は、VPN以外の原因が考えられます。
組織内ネットワークの問題
ファイアウォールの設定
組織内のファイアウォールがDNS通信を遮断している場合、名前解決ができません。 ファイアウォールは、ネットワークのセキュリティを維持するために、不正なアクセスや通信を遮断する役割を担っています。しかし、誤った設定により、DNS通信が遮断されてしまうことがあります。DNS通信は、通常、ポート53番を使用します。ファイアウォールがポート53番の通信を遮断している場合、名前解決ができません。DNSサーバーへの通信を許可するように、ファイアウォールの設定を変更してください。ファイアウォールの設定変更は、ネットワーク管理者または情報システム担当者に依頼してください。また、ファイアウォール以外にも、プロキシサーバーやコンテンツフィルターなどがDNS通信を妨げている可能性も考慮してください。これらの設定についても、ネットワーク管理者または情報システム担当者に確認してもらうことを推奨します。
Active Directoryとの連携
Active Directory(AD)環境では、DNSサーバーがActive Directoryと連携している場合があります。 ActiveDirectoryは、Windows Serverで提供されるドメイン管理サービスで、ユーザー認証やアクセス制御など、様々な機能を提供します。Active Directoryと連携しているDNSサーバーは、Active Directoryの情報を利用して名前解決を行います。Active Directory側の設定に問題があると、名前解決に影響を与えることがあります。例えば、DNSレコードが正しく登録されていない場合や、DNSサーバーの設定が誤っている場合などが考えられます。Active Directory環境でのDNSトラブルは、Active Directoryの管理者にご相談ください。Active Directoryの管理者は、DNSサーバーの設定やDNSレコードの状態を確認し、問題を解決することができます。また、Active Directoryのイベントログを調査することで、問題の原因を特定できる場合があります。Active Directoryのイベントログには、DNSサーバーに関するエラーや警告などの情報が記録されています。
ルーターの設定
ルーターは、家庭やオフィスなどのネットワークで、複数のデバイスをインターネットに接続するために使用されます。 ルーターのDNS設定が誤っている場合、名前解決ができません。ルーターは、通常、ISPが提供するDNSサーバーのアドレスを自動的に取得するように設定されています。しかし、ルーターの設定が誤っている場合、DNSサーバーのアドレスが正しく取得できなかったり、誤ったアドレスが設定されたりすることがあります。ルーターの設定画面から、DNSサーバーのアドレスを確認し、必要に応じて修正してください。DNSサーバーのアドレスには、ISPが提供するDNSサーバーのアドレスや、Google PublicDNS(8.8.8.8、8.8.4.4)、CloudflareDNS(1.1.1.1、1.0.0.1)などのパブリックDNSサーバーのアドレスを指定することができます。これらのパブリックDNSサーバーは、高速かつ信頼性の高いDNSサービスを提供しており、多くのユーザーに利用されています。ルーターの設定画面へのアクセス方法は、ルーターの機種によって異なります。ルーターのマニュアルを参照するか、メーカーのWebサイトで確認してください。
まとめ:DNSトラブルは原因を特定し、適切な解決策を
本記事では、DNS名前解決が遅い・できない時の原因と解決策について詳しく解説しました。 DNSトラブルは、一見複雑に見えるかもしれませんが、原因を特定し、一つずつ確認していくことで、必ず解決することができます。DNSサーバーへの接続問題、DNSサーバーの応答遅延、DNSキャッシュの問題、クライアント環境の設定ミス、組織内ネットワークの問題など、様々な原因が考えられます。それぞれの原因に対して、適切な確認ポイントと解決策を試してみてください。本記事が、DNSトラブル解決の一助となれば幸いです。もし、解決できない場合は、ネットワーク管理者や専門家にご相談ください。彼らは、より専門的な知識と経験を持っており、問題を迅速に解決することができます。また、DNSに関する知識を深めることで、今後発生する可能性のあるDNSトラブルに、より適切に対処できるようになります。インターネットを快適に利用するために、DNSの仕組みを理解し、トラブルシューティングのスキルを身につけておきましょう。
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