AD実践シリーズ①|今さら聞けないActive Directoryの基本と仕組み

コラム

本コラムは、中小企業の現場で活用されるActive Directory(AD)について、実務で役立つ知識を段階的に学べる「AD実践シリーズ」の第1回です。これから数回にわたり、ADの基本から実務での活用方法、トラブル対応まで、現場で求められる実践的な内容をお届けしていきます。
Active Directory(AD)は、企業の情報システム基盤において重要な役割を果たしています。本記事では、ActiveDirectoryの基本的な仕組みから、クラウド時代のAzure ADとの連携、現場での活用方法までをわかりやすく解説します。

目次

ActiveDirectoryとは?基本の仕組みを理解する

ActiveDirectoryの役割と構成要素

Active Directoryは、WindowsServerに搭載されたディレクトリサービスです。組織内のユーザー、コンピューター、グループなどの情報を一元管理し、認証やアクセス制御を行います。ActiveDirectoryは、組織におけるITリソース管理の中核を担い、その安定稼働はビジネスの継続性を大きく左右します。ActiveDirectoryの主な役割は、ユーザーアカウントとグループの管理、リソースへのアクセス許可の制御、セキュリティポリシーの適用などです。これらの機能を組み合わせることで、管理者は組織全体のリソースを効率的に管理し、セキュリティを維持できます。ActiveDirectoryの構成要素としては、ドメインコントローラー、組織単位(OU)、グループポリシーなどが挙げられます。ドメインコントローラーは、ActiveDirectoryのデータベースを保持し、認証要求を処理するサーバーです。組織単位(OU)は、ActiveDirectory内のオブジェクトを論理的にグループ化するためのコンテナです。グループポリシーは、組織内のコンピューターやユーザーに適用される設定の集合です。これらの要素が連携することで、ActiveDirectoryは組織全体のITリソースを効果的に管理するための基盤となります。ActiveDirectoryは、中小企業から大企業まで、あらゆる規模の組織で利用されており、その重要性はますます高まっています。適切な設計と運用を行うことで、ActiveDirectoryは組織のITインフラストラクチャを支える強力なツールとなります。

Active Directoryの認証プロセス

ユーザーがActiveDirectoryに参加しているコンピューターにログオンする際、ActiveDirectoryはユーザーのIDとパスワードを検証し、認証を行います。この認証プロセスは、Kerberosプロトコルに基づいており、セキュリティの高い認証方式として広く利用されています。認証に成功すると、ユーザーはActiveDirectoryによって許可されたリソースにアクセスできるようになります。ActiveDirectoryの認証プロセスは、以下のステップで構成されます。まず、ユーザーがコンピューターにログオンする際に、ユーザー名とパスワードを入力します。次に、コンピューターはActiveDirectoryに対して認証要求を送信します。ActiveDirectoryは、ユーザーのIDとパスワードをデータベースと照合し、認証を検証します。認証に成功すると、ActiveDirectoryはコンピューターに対して認証チケットを発行します。コンピューターは、この認証チケットを使用して、ActiveDirectoryによって許可されたリソースにアクセスできます。ActiveDirectoryの認証プロセスは、組織内のリソースへのアクセスを安全に制御するための重要な仕組みです。適切な認証設定を行うことで、不正アクセスを防止し、セキュリティを強化することができます。

ActiveDirectoryの主要な機能

ActiveDirectoryは、ユーザー管理、グループ管理、グループポリシー、認証、アクセス制御など、さまざまな機能を提供します。ユーザー管理機能では、ユーザーアカウントの作成、変更、削除を行うことができます。グループ管理機能では、ユーザーをグループにまとめて管理し、グループ単位でアクセス許可を付与することができます。グループポリシー機能では、組織内のコンピューターやユーザーに対して、さまざまな設定を適用することができます。認証機能では、ユーザーのIDとパスワードを検証し、リソースへのアクセスを許可することができます。アクセス制御機能では、ユーザーやグループに対して、ファイル、フォルダー、プリンターなどのリソースへのアクセス許可を制御することができます。これらの機能を活用することで、組織は情報システムを効率的に管理し、セキュリティを強化することができます。ActiveDirectoryは、組織のITインフラストラクチャを支える重要なツールであり、その機能を最大限に活用することで、組織の生産性向上とセキュリティ強化に貢献することができます。ActiveDirectoryは、組織の規模やニーズに合わせて柔軟に構成できるため、あらゆる規模の組織で利用されています。

Azure ADとは?クラウド時代のID管理

Azure ADの基本機能と特徴

Azure AD(Azure ActiveDirectory)は、Microsoftが提供するクラウドベースのIDおよびアクセス管理サービスです。SaaSアプリケーションへのシングルサインオン(SSO)、多要素認証(MFA)、条件付きアクセスなどの機能を提供し、クラウド環境でのID管理を支援します。AzureADは、オンプレミスのActive Directoryを補完する役割も果たし、ハイブリッド環境でのID管理を容易にします。AzureADの主な機能としては、ユーザーとグループの管理、アプリケーションの登録と管理、デバイスの登録と管理、認証と承認、レポートと監視などが挙げられます。これらの機能を活用することで、組織はクラウド環境におけるID管理を効率的に行い、セキュリティを強化することができます。AzureADは、Microsoft365、Salesforce、Boxなど、さまざまなSaaSアプリケーションとの連携をサポートしており、シングルサインオン(SSO)を実現することで、ユーザーの利便性を向上させることができます。また、多要素認証(MFA)や条件付きアクセスなどの機能により、不正アクセスを防止し、セキュリティを強化することができます。AzureADは、クラウド環境におけるID管理のベストプラクティスを提供し、組織のビジネスを支援します。

オンプレミスADとAzure ADの違い

オンプレミスのActiveDirectoryは、組織が自社のデータセンターで管理するID管理システムです。一方、AzureADはクラウドベースのID管理サービスであり、Microsoftによって管理されます。両者は、管理方法、スケーラビリティ、コストなどの点で異なります。オンプレミスのActiveDirectoryは、組織が自社のハードウェアとソフトウェアを管理する必要があり、初期投資や運用コストがかかります。一方、AzureADはクラウドサービスであるため、初期投資は不要であり、運用コストも削減できます。また、Azure ADは、オンプレミスのActiveDirectoryと比較して、スケーラビリティに優れており、組織の成長に合わせて柔軟に拡張することができます。オンプレミスのActiveDirectoryは、組織が物理的なサーバーを管理する必要があるため、災害対策やバックアップなどの対策を講じる必要があります。一方、AzureADはクラウドサービスであるため、Microsoftが災害対策やバックアップなどの対策を講じており、組織はこれらの対策を講じる必要はありません。オンプレミスのActiveDirectoryとAzure ADは、それぞれ異なる特徴を持っており、組織のニーズに合わせて最適なID管理システムを選択する必要があります。

Azure AD ConnectによるオンプレミスADとの連携

Azure AD Connectを使用すると、オンプレミスのActive DirectoryとAzureADを連携させることができます。これにより、オンプレミスのユーザー情報をAzure ADに同期し、シングルサインオンを実現できます。Azure ADConnectは、オンプレミスのActive DirectoryとAzureADの間で、ユーザー、グループ、デバイスなどのオブジェクトを同期するためのツールです。Azure ADConnectを使用することで、オンプレミスのユーザーは、クラウド上のリソースにアクセスする際に、同じIDとパスワードを使用することができます。Azure ADConnectは、パスワードハッシュ同期、パススルー認証、フェデレーション認証など、さまざまな認証方式をサポートしています。パスワードハッシュ同期は、オンプレミスのActiveDirectoryのパスワードハッシュをAzure ADに同期する方式です。パススルー認証は、ユーザーの認証要求をオンプレミスのActiveDirectoryに転送する方式です。フェデレーション認証は、Active Directoryフェデレーションサービス(ADFS)などのフェデレーションサーバーを使用して認証を行う方式です。Azure ADConnectは、組織のニーズに合わせて柔軟に構成できるため、さまざまなシナリオに対応できます。

ActiveDirectoryとAzure ADの連携パターン

ハイブリッドID環境の構築

Active DirectoryとAzureADを連携させることで、ハイブリッドID環境を構築できます。ハイブリッドID環境では、オンプレミスのリソースとクラウドのリソースの両方に、同じIDとパスワードでアクセスできます。ハイブリッドID環境を構築することで、ユーザーは複数のIDとパスワードを管理する必要がなくなり、利便性が向上します。また、IT管理者は、オンプレミスとクラウドの両方のリソースを、一元的に管理することができます。ハイブリッドID環境を構築するためには、AzureAD Connectを使用して、オンプレミスのActive DirectoryとAzureADの間で、ユーザー、グループ、デバイスなどのオブジェクトを同期する必要があります。Azure ADConnectは、パスワードハッシュ同期、パススルー認証、フェデレーション認証など、さまざまな認証方式をサポートしています。ハイブリッドID環境を構築する際には、セキュリティ要件を考慮し、適切な認証方式を選択する必要があります。また、オンプレミスとクラウドの両方のリソースに対して、適切なアクセス制御を設定する必要があります。ハイブリッドID環境を構築することで、組織はオンプレミスとクラウドの両方のメリットを享受し、ビジネスの柔軟性と効率性を向上させることができます。

シングルサインオン(SSO)の実現

Active DirectoryとAzureADを連携させることで、BoxやMicrosoft365などのSaaSアプリケーションへのシングルサインオン(SSO)を実現できます。これにより、ユーザーは複数のIDとパスワードを覚える必要がなくなり、利便性が向上します。シングルサインオン(SSO)とは、一度の認証で複数のアプリケーションにアクセスできる仕組みです。ActiveDirectoryとAzure ADを連携させることで、ユーザーはオンプレミスのActiveDirectoryのIDとパスワードを使用して、クラウド上のSaaSアプリケーションにアクセスできるようになります。シングルサインオン(SSO)を実現するためには、AzureADにSaaSアプリケーションを登録し、Active Directoryとの連携を設定する必要があります。Azure ADは、SAML、OAuth、OpenIDConnectなどの標準的な認証プロトコルをサポートしており、さまざまなSaaSアプリケーションとの連携が可能です。シングルサインオン(SSO)を導入することで、ユーザーの利便性が向上するだけでなく、IT管理者の負担も軽減されます。また、セキュリティも強化され、不正アクセスを防止することができます。シングルサインオン(SSO)は、クラウド環境におけるID管理の重要な要素であり、組織の生産性向上とセキュリティ強化に貢献します。

条件付きアクセスによるセキュリティ強化

AzureADの条件付きアクセス機能を使用すると、デバイスの状態、場所、時間などの条件に基づいて、アクセスを制御できます。これにより、不正アクセスを防止し、セキュリティを強化できます。条件付きアクセスとは、特定の条件が満たされた場合にのみ、リソースへのアクセスを許可する仕組みです。AzureADの条件付きアクセスを使用すると、例えば、会社のデバイスからのアクセスのみを許可したり、特定の場所からのアクセスのみを許可したり、特定の時間帯のみアクセスを許可したりすることができます。条件付きアクセスは、多要素認証(MFA)と組み合わせて使用することで、さらにセキュリティを強化することができます。例えば、会社のデバイス以外からのアクセスには、多要素認証(MFA)を要求するように設定することができます。条件付きアクセスを設定するためには、AzureADのポリシーを作成し、条件とアクセス制御を設定する必要があります。条件付きアクセスは、クラウド環境におけるセキュリティ対策の重要な要素であり、組織の情報を保護するために不可欠な機能です。条件付きアクセスを適切に設定することで、不正アクセスを防止し、情報漏洩のリスクを軽減することができます。

Active Directoryの現場での活用

グループポリシーによる設定の一元管理

ActiveDirectoryのグループポリシーを使用すると、組織内のコンピューターの設定を一元管理できます。これにより、セキュリティポリシーを適用したり、アプリケーションを配布したりすることができます。グループポリシーは、ActiveDirectoryの管理者が、組織内のコンピューターやユーザーに対して、さまざまな設定を適用するための機能です。グループポリシーを使用すると、例えば、パスワードポリシー、アカウントロックアウトポリシー、ソフトウェアのインストール、デスクトップのカスタマイズなどを一元的に管理することができます。グループポリシーは、組織のセキュリティポリシーを遵守するために不可欠な機能であり、適切な設定を行うことで、不正アクセスを防止し、情報漏洩のリスクを軽減することができます。グループポリシーは、組織の規模やニーズに合わせて柔軟に構成できるため、あらゆる規模の組織で利用されています。グループポリシーを使用することで、IT管理者の負担を軽減し、組織全体のIT環境を効率的に管理することができます。グループポリシーは、ActiveDirectoryの最も重要な機能の1つであり、組織のITインフラストラクチャを支える基盤となります。

ソフトウェア配布による効率的な展開

ActiveDirectoryのソフトウェア配布機能を使用すると、組織内のコンピューターにソフトウェアを効率的に展開できます。これにより、手作業によるインストール作業を削減し、展開時間を短縮できます。ソフトウェア配布機能を使用すると、ActiveDirectoryの管理者は、組織内のコンピューターに対して、ソフトウェアパッケージを自動的にインストールすることができます。ソフトウェアパッケージは、グループポリシーを使用して配布され、ユーザーがログオンする際に自動的にインストールされます。ソフトウェア配布機能を使用することで、IT管理者は、手作業によるインストール作業を削減し、ソフトウェアの展開時間を短縮することができます。また、ソフトウェアのバージョン管理も容易になり、組織全体のソフトウェア環境を標準化することができます。ソフトウェア配布機能は、組織のITインフラストラクチャを効率的に管理するための重要な機能であり、組織の生産性向上に貢献します。ソフトウェア配布機能を使用することで、IT管理者は、ソフトウェアの展開にかかる時間とコストを削減し、より戦略的な業務に集中することができます。

アクセス許可設定によるファイルサーバーの保護

ActiveDirectoryのアクセス許可設定を使用すると、ファイルサーバー上のフォルダーやファイルへのアクセスを制御できます。これにより、機密情報を保護し、情報漏洩を防止できます。アクセス許可設定は、ActiveDirectoryの管理者が、ユーザーやグループに対して、ファイルやフォルダーへのアクセス権を付与するための機能です。アクセス許可設定を使用すると、例えば、特定のユーザーのみが特定のファイルにアクセスできるようにしたり、特定のグループのみが特定のフォルダーにアクセスできるようにしたりすることができます。アクセス許可設定は、組織の機密情報を保護するために不可欠な機能であり、適切な設定を行うことで、情報漏洩のリスクを軽減することができます。アクセス許可設定は、ActiveDirectoryの最も重要な機能の1つであり、組織のITインフラストラクチャを支える基盤となります。アクセス許可設定を適切に設定することで、組織は情報セキュリティを強化し、ビジネスの継続性を確保することができます。アクセス許可設定は、組織の規模やニーズに合わせて柔軟に構成できるため、あらゆる規模の組織で利用されています。

まとめ:Active DirectoryとAzure ADを効果的に活用するために

ActiveDirectoryは、オンプレミスの情報システム基盤において重要な役割を果たします。AzureADとの連携により、クラウド環境との親和性を高め、より効率的で安全なID管理を実現できます。Active DirectoryとAzureADを効果的に活用することで、組織はITインフラストラクチャを最適化し、ビジネスの成長を支援することができます。本記事で解説した内容を参考に、ActiveDirectoryとAzure ADを効果的に活用し、組織の情報システム基盤を強化してください。

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Active DirectoryとAzureADは、それぞれ異なる特徴を持っていますが、連携することで、組織に大きなメリットをもたらします。ActiveDirectoryは、オンプレミスのリソース管理に優れており、AzureADは、クラウドのリソース管理に優れています。両者を連携させることで、組織はオンプレミスとクラウドの両方のリソースを効率的に管理することができます。ActiveDirectoryとAzure ADの連携は、組織の規模やニーズに合わせて柔軟に構成できるため、あらゆる規模の組織で利用されています。ActiveDirectoryとAzure ADを効果的に活用することで、組織はITインフラストラクチャを最適化し、ビジネスの成長を支援することができます。

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